専門分野:高分子物理化学、レオロジー

研究課題:天然繊維溶液からの材料創生
繊維ネットワークの構造と物性解析

1. 主要な研究の概要

1)天然繊維の溶液から新規繊維材料の創生
セルロースは自然界において、植物だけではなく、酢酸菌、粘菌、ホヤ類によっても生産されます。これらのセルロースは、由来が異なるにもかかわらず、すべて同一の分子構造をもつとされてきました。しかし、最近、由来の異なるセルロースが溶液中で異なる分子特性を示すことが明らかになりました。たとえば、バクテリアセルロースの 塩化リチウム/ジメチルアセトアミド溶液は、ある濃度以上で液晶を形成します。また、ホヤから得られるセルロースは、分子量がきわめて大きく高い曳糸性を示します。これらのセルロースを機能性材料として活用するため、それぞれのセルロースの特徴を生かした繊維、フィルムおよびゲルの製造法について検討しています(図1)。

ホヤ由来セルロースの高い曳糸性
図1  ホヤ由来セルロースの高い曳糸性

2)繊維ネットワークの構造とレオロジー特性

繊維ネットワークの構造とその物性は、製紙工業とも密接に関係し、産業的にもまた学術的にも重要な課題です。たとえば、繊維分散系は、同じ濃度の球状粒子分散系と比較して著しく高い粘性と弾性を示しますが、これは繊維を扱う工業における操作性の低下の要因になっています。繊維ネットワークのこのような特性を解明し、さらに改善するために、レオロジー測定などの実験および理論を用いて多面的にその特性を解明することを目指しています(図2)。

木材パルプ繊維のネットワーク 
図2  木材パルプ繊維のネットワーク

2. 主要な研究論文、著書

1) D. Ishii, Y. Kanazawa, D. Tatsumi, T. Matsumoto, Effect of solvent exchange on the pore structure and dissolution behavior of cellulose, J. Appl. Polym. Sci., 103, 3976-3984 (2007).
2) 松本孝芳,巽 大輔(分担執筆),“レオロジーデータハンドブック”,日本レオロジー学会 編, 丸善, 東京 (2006).
3) H. Aono, D. Tatsumi, T. Matsumoto, Scaling analysis of cotton cellulose/LiCl?DMAc solution using light scattering and rheological measurements, J. Polym. Sci. Part B, 44, 2155-2160 (2006).
4) D. Ishii, D. Tatsumi, T. Matsumoto, K. Murata, H. Hayashi, H. Yoshitani, Investigation of the structure of cellulose in LiCl/DMAc solution and its gelation behavior by small-angle x-ray scattering measurements, Macromol. Biosci., 6, 293-300 (2006).
5) H. Aono, D. Tatsumi, T. Matsumoto, Characterization of aggregate structure in mercerized cellulose/LiCl?DMAc solution using light scattering and rheological measurements, Biomacromolecules, 7, 1311-1317 (2006).
6) 巽 大輔, 財満信宏, 松本孝芳, 杉山英彦, 高橋治雄, ケナフのハイドロトロピックパルプ化と酵素漂白, 材料, 55, 363-366 (2006).
7) 巽 大輔, 柳澤正弘, 松本孝芳, ホヤおよび植物セルロース溶液のブレンド系のレオロジー特性, 材料, 53, 1267-1271 (2004).

3. 主要な研究手法、技術

レオロジー、光散乱、小角X線散乱、固体NMR、量子力学